ミリメートル水銀厨

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『機械兵団の進軍』チームシールド感想

 

はじめに

 友人の厚意により『機械兵団の進軍』チームシールドを遊ばせてもらった。

チーム・シールド

 チームシールドとは、3人1チームでドラフトブースターを12パックを開け、40枚デッキを3人分組んで相手チームと対戦する遊び方。身内では、参加者6人を2チームに分け、相手チームと総当たりするルールで遊んでいる。1人あたり3マッチ、計9マッチ行い5マッチ勝ったチームの勝利となる。

 私がチームのリーダーとして立てた作戦と事前練習、本番の様子について覚えている範囲で記録に残す。

 

登場人物

☆がチームリーダー

ファイレクシア軍

  • ☆私

    • MtG歴は4年ほど。ドラフトばかり遊んでいて構築はあまり遊ばない。

  • I氏

    • MtG歴は半年ほど。パウパーの白黒ブリンクをこよなく愛する。

  • T氏

    • MtG歴は2か月ほど。どうやらリミテッドにハマっているご様子。

多元宇宙連合軍

  • ☆O氏

    • MtG歴は4年ほど。パウパーで弱いデッキを作っては弱すぎると嘆いている。

  • K氏

    • MtG歴は半年ほど。始めて半年なのにパウパーのデッキを10個近く持っているらしい。

  • F氏

    • MtG歴は5年以上? 身内にMtGを広めた人。非常に独創的なデッキ構築力を持つ。

 

『機械兵団の進軍』リミテッドの実績

 『機械兵団の進軍』のドラフトはとても好きな環境だったので、MtGArenaのプレミア・ドラフトをそれなりの数回していた(41回参加、146勝110敗勝率57.0%、最高ダイヤモンド3)。ミシックランクのプレイヤーには劣るが、知らないカードはないしカード評価とアーキタイプ評価もある程度固まっていたのでこの環境には自信があった。

 シールドはほとんど遊んでいないが、チームシールドはデッキパワーがシールドよりドラフトに近いので、シールド力よりドラフト力が求められると私は考えている(諸説あり)。

 

チーム分けの感想

 チームバランス的には不利側だと感じていた。MtG歴の合計で負けている上に、相手チームの3人は『機械兵団の進軍』ドラフトをそこそこやりこんでいた(3人合計で50回くらい?)が、対して味方チームは私しか数を回していなかった。

 しかし、I氏は最近リミテッドのコツをつかんできたようで直近の身内のドラフト会では勝ち越していたし、T氏は遊戯王とシャドウバースと長くプレイしていた経験のおかげかMtG初心者とは思えないほど冴えたプレイをするので、リミテッドの基礎を教えて『機械兵団の進軍』の強いカードを覚えてもらえば十分に勝てるだろうとも感じていた。

 ありがたいことにI氏もT氏もチームシールドへのモチベが高く、オンライン作戦会議2回とオフライン練習会1回を開くことができた。

 

第1回オンライン作戦会議

 第1回は、スプレッドシートを使ってリミテッドの基礎知識と『機械兵団の進軍』のアーキタイプ評価を教えた。実際に使ったスプレッドシートのリンクを張っておく(一個人の考えであるのと、初級者に教えるためにある程度モデル化した書き方をしていることに留意して読んでもらいたい)。

docs.google.com

 私は原則例外という考え方が好きなので、まずは原則に絞って教えることにした(原則が身に着いていれば例外は後から自然と覚えられる)。1シート目の「リミテッドの基礎」に書かれているのは私が思うリミテッドの原則である。

 2シート目にアーキタイプ評価と色の分配を書いているが、あくまで目安であって、パックから出たカード次第でどのような色の分配もありうると考えていた。詳細は次の章で説明する。

 

アーキタイプ評価の詳細

 大前提として、『機械兵団の進軍』リミテッドはすべての2色の組み合わせに可能性がある。『機械兵団の進軍』は強いレア*1が非常に多く、また「多元宇宙の伝説」枠がアンコモン以上確定なので全体的なレアリティが高いため、コモンだけで再現性の高いデッキを組むことができない。以下の評価で弱いとされている2色アーキタイプも、色の合うレアを1,2枚引くだけでパワーがグンと上がる。

 したがって、以下のアーキタイプ評価はあくまで平均的な引きをした場合の評価だと思ってほしい。あなたのパックの選び方で評価は容易に覆る。

2色アーキタイプ(S~Dの5段階評価)

3色

 チームシールドはドラフトやシールドに比べて3色*4にするメリットが薄いと感じていた。シールドは引いたレアを可能な限り詰め込むために多色化することがあるが、チームシールドは自分が使わなかったレアは味方が使ってくれる。ドラフトはカットするために取ったレアを入れることがあるが、チームシールドは味方からレアを奪うと味方のデッキパワーが落ちてチームの利益にならない。また、ドラフトは上家が色が合わなくて流したレアを無理のない巡目で取って多色化することがあるが、チームシールドはチームで全色使うので色が合わない単色レアは存在しない。

 3色が生まれる引きは2通りだけあると思っていた。「強い3色以上のレアを引いた場合」と、「味方2人が使えない強い2色レアをタッチする場合」である。

強い3色以上のレアを引いた場合

 具体的には《腹音鳴らしとフブルスプ》《クロクサとクノロス》《サリアとギトラグの怪物》《ズルゴとオジュタイ》《法務官の声、アトラクサ》のいずれかを引いた場合である。他の3色以上のレアは色を足すほどの価値がないと判断した。どの2色をメイン色にしてどの1色をタッチ色にするかは他のカードの引きによる。

 アトラクサを引いた場合は4色になるが、おそらく青緑t白黒か黒緑t白青になる(多色サポートの《荒廃した芽ぐみ》《ゼンディカーへの侵攻》をメイン色で使いたいため)。

味方2人が使えない強い2色レアをタッチする場合

 例えば、青黒と白緑と青赤で組むことに決まったときに、青黒が《捕食の伝令、グリッサ》を使うために緑をタッチする、というような場合である。このパターンは考慮するべき要素が多すぎる*5ので当日パックから出てきたカードを見てアドリブで判断するつもりだった。

重複色

 前述のとおり、チームシールドは3色を組むメリットが薄い。よって、基本的には2色のデッキを3つ組むことになるのだが、マジックに存在する色の数は5つであるため、必ずどれか1色が2つのデッキに入ることになる。これを本文では重複色*6と呼ぶことにする。

 重複色は、その環境で強いとされる色であるのが望ましい。なぜなら、強い色は強いコモンアンコモンを多く有しているため、2つのデッキで分け合ってもデッキのパワーを確保しやすいからである。

 『機械兵団の進軍』リミテッドの色は 青>黒>緑>赤>白 の順に強いと思っていたので、なるべく青か黒を重複色にしたいし、赤や白は分け合いたくなかった。

 

オフライン練習会

 休日を使ってオフラインで集まり、『機械兵団の進軍』12パックを開けてデッキを組み、対戦を行う実践形式の練習会を行った。主な目的は、『機械兵団の進軍』の経験が浅い2人に実際のカードを触ってもらいカードを覚えてもらうことと、コンバットの考え方を実戦を通して教えることである。

 オフライン練習会のパックの引きはかなり渋かった。色を決められるアンコモンたち(《ザルファーの司令官》《光素を漁る者》《アモンケットへの侵攻》《植物の喧嘩屋》)が0枚で、レアも《太陽降下》以外はパッとしなかった。《練達の職人、レヤブ》が2枚とコモンの装備品が山ほど出たので赤白装備品をI氏が使い、《エルフの桶守り》が2枚出たので黒緑を私が使い、余ったカードで騎士無し《太陽降下》入りの白青のT氏が使った。

 I氏とT氏の対戦中は、私が横でプレイングのアドバイスをしていた。具体的には、2回のフルパンでライフを削り切れるプランがあるならそのプランを取った方がいい、見た目上ブロックされないクリーチャーに装備品を装備するよりそのマナをクリーチャー展開に使った方がいい、相手の手札には除去か+2/+2がある可能性を考慮してブロッククリーチャーを選択するといい、瞬速呪文や培養器トークンの起動は相手ターンに使った方がいい、などである。

 デッキを組む練習のために別の色の組み合わせも試した。赤白装備品はそのままで、赤緑と青黒を組んでそれぞれT氏と私が使ったのだが、赤が重複色になったために赤白と赤緑のデッキパワーが落ち、一方青黒はコモンの寄せ集めにしかならなかったので本当に弱かった。結果的には始めの色の組み合わせの方が良かったと思う。

 練習会後にT氏おすすめの中華料理店*7で腹を満たしながら、練習会では出なかったが強いコモンとアンコモンの話をした。

 

第2回オンライン作戦会議

 本番の前日に17lands.comを使って各コモンカードの勝率の話をした。T氏の提案で、途中からは各色のコンバットトリックと除去の確認と、多元宇宙の伝説のアンコモンを一通り予習した*8

 コンバットトリックはたくさん覚えられないと思ったので、白の《空中ブースト》《天使の介入》、緑の《機械蜘蛛の順応》だけは警戒するように伝えた(実際に私がプレイするときもこれくらいしか警戒していない)。

 除去については、なるべく強いクリーチャーを討ち取れるときか、2対1交換を行える時まで温存して、相手の弱いクリーチャーはなるべく地上戦で対処するのがよいと伝えた。

 オフライン練習会の時点である程度カードとアーキタイプの評価の合意が取れていたので、この会は早めに終わって翌日の本番に備えた。

 

本番

デッキ構築

 本番で開けた12パックの内容は非常に良かった。緑の高レアリティの層の厚さ(《レンと次元壊し》《ヴォリンクレックス》《打ち砕かれた尖塔、オゾリス》《カル・シスマの恐怖、殺し爪》《雑草学の指導者》×3)がまず目についたので、事前に緑を予習していたT氏に緑のカードを全て預けた。次に、私が最もやりたい色である青黒のアンコモン《光素を漁る者》《アモンケットへの侵攻》)が各1枚ずつ出ていたので青黒もまず間違いないと考えた。残る色は白赤だが、白赤のプールを見ると強いカード(《原初の征服者、エターリ》《伝承師、クイントリウス》《練達の職人、レヤブ》)が残っていたのでこれも強いデッキになりそうだと思い決めた。最後に緑の片割れの色を決める必要があったが、黒緑のアンコモンが3枚(《エルフの桶守り》《ローウィンへの侵攻》《魂浸し、ダイナ》)あったので黒緑がいいという判断になった。

 最終的なデッキリストの画像を載せる*9

 

私 青黒 (沼9,島7,2色土地1)

 

I氏 白赤装備品 (平地8,山8,2色土地1)

 

T氏 黒緑

 

 どのデッキも強く、0-3しそうなデッキは一つもなかった。オフライン練習会であれだけデッキを組むのに苦労したのが嘘のようにスムーズに組めて、少しデッキを回す時間さえ生まれた。やはりシールドは強いレアを引くのが板。

 

対戦

1試合目

 vs O氏(赤黒) 引き分け

この時点でチームの勝敗は1勝1敗1引き分け。

2試合目

 vs K氏(白緑)引き分け

  • 1ゲーム目 ×
  • 2ゲーム目 ○
  • 3ゲーム目 -
    • よく覚えていない。相手のリソースは尽きていたのであとはターンをかければ勝てていたと思うがとにかく時間がなかった。延長の追加5ターンまで使い切って引き分け。

この時点でチームの勝敗は2勝2敗2引き分け。

3試合目

 vs F氏(青赤t黒)勝ち

 2ゲーム目終了時、既に他のマッチは終わっていて、1勝1敗だった。この時点でチームの勝敗は3勝3敗2引き分けとなり、私vsF氏の3ゲーム目にチームの勝敗が委ねられた。

  • 3ゲーム目 ○
    • チームの命運がかかっていたがプレッシャーはあまり感じておらず、やれることを全力でやるだけだと考えていた。5マナまで順調に土地が伸び、《卓絶した声明》《芸術的な拒絶》で打ち消すことができた。盤面は大きく負けていたが、6マナ目を引いて《フィオーラへの侵攻》が間に合い、途中で時間切れのアナウンスはあったものの延長3ターン目に殴り切って勝ち。F氏の「負けました」の声を聞いた瞬間は手が震えた。

結果

 4勝3敗2引き分けでファイレクシア軍の勝利。全多元宇宙はファイレクシアの油に満たされ、偉大なる指導者エリシュ・ノーンと共に生きる喜びに打ち震えることになった。

 

感想

 チーム全員でつかんだ勝利だった。あと1敗でもしていたら負けなので無駄な勝利というものが一つもない。私は全試合延長ターンに入ったので休憩もあまりなく、チームメイトのサイドボードプランについてほとんどアドバイスできなかったが、しっかりやり切ってくれた。チームメイトには感謝してもしきれない。『機械兵団の進軍』は本当に好きでやりこんだセットなので、結果が伴ったのも自信になった。

良かった点

  • 前回のチームシールド(灯争大戦)終了後に3つの目標(全員のデッキパワーをなるべく均等にする、柔軟な発想を持つ、デッキ構築はチームメイトのアドバイスをもらう)を立てた。前者2つは達成できていたと思う。チームメイトのアドバイスについては、リミテッドの経験に差があったのであまりもらわなかった。
  • 作戦会議と事前練習は必要十分なものができたと思う。初級者2人にリミテッドを教える機会をもらったことで、また身内のリミテッド会のレベルが一段上がったはず。I氏とT氏からも好意的な反応はもらっていて、コモンクリーチャーの標準スタッツの目安と、攻めるデッキのコンバットの考え方を知れたのは良かったと言ってもらえた。
  • 試合間のコミュニケーションが相手チームより上手くいっていた。「K氏のデッキには《太陽降下》が入っているから、勝ち確定の盤面になったらそれ以上クリーチャーを追加しない方がいい」というアドバイスをT氏にして実際に役立ったらしい。逆に、相手チームのF氏は私の《フィオーラへの侵攻》の存在を3試合目の3ゲーム目まで知らなかった。

反省点

  • プレイが遅かった。私はよく負けた時に気持ちを落ち着かせるために時間をかけてシャッフルをしたり、微差の2択を長考したりするのだが、青黒というロングゲームを見るデッキを使うときは素早いプレイをしなければならなかった。特に1試合目も2試合目も3ゲーム目に十分な時間があればだいたい勝っていたので悔やまれる。根本的なタイムマネジメントを見直したい。
  • 「柔軟な発想を持つ」ことを重視しすぎて、事前に誰がどの色をやるのかをほぼ決めなかった(青黒を組めたら私が青黒をやることだけ決めていた)。なんとなくの色の割り振りを単色単位で決めておいて、その色のカードを重点的に予習してもらう方がカード理解が深まったと思う。
  • T氏のデッキを、黒緑ではなく《報奨の祝賀者、イモーティ》《ゼンディカーへの侵攻》を絡めた青緑ランプにする可能性を考えていなかった。青のカードの引きが悪めだったのと、初級者にランプを握らせる不安があるので黒緑が最善だった気もするが、考慮にすら入らなかったのは反省したい。
  • 《無力化》はバトルが多く入った青黒との相性がいいことをすっかり忘れていた。T氏にサイドボード用カードとして渡したが、自分が使うべきだった。
  • 《芸術的な拒絶》2枚は多かった。マナが伸びれば勝つカードは他にもたくさん入っているので、1枚は序盤を支えるカードにした方が良かった。
  • 2試合目に《ぎらつく氾濫》をサイドインするのを忘れていた。色対策のラスだな~とは思っていたが、ArenaのBO1ドラフトで使うカードではないので何色の対策なのかを忘れていた。負けたらサイドをガン見したい。

次の目標

  • 素早いプレイを心がける
  • 負けたらサイドを見る
  • 柔軟な発想を持つ(継続)
  • デッキ構築はチームメイトのアドバイスをもらう(継続)

 

おわりに

 『機械兵団の進軍』リミテッドは最高に面白いので、読者諸賢も『機械兵団の進軍』チームシールドをぜひ遊んでみてほしい。

 最近、身内でリミテッド会が開かれ、負けた人が悔しくて箱を買って次回のリミテッド会を開くという好循環(?)ができていて*10、幸運なことに場代だけでリミテッドを遊ばせてもらっている。感謝しかない。今後ともよろしくお願いいたします。

*1:神話レアを含む。本文中に「レア」と書かれている箇所はすべて「レアもしくは神話レア」と読みかえてよい

*2:本番を通して少し評価が下がった。いまはBランクだと思っている。

*3:本番を通してこのアーキタイプ《植物の喧嘩屋》に頼りすぎていると感じた。AからBに落ちるかは分からない。

*4:2色タッチ1色を含む。以下同様。

*5:青黒と白緑どちらがグリッサをタッチするのか、そもそも黒緑を組んでグリッサを自然に入れた方が強いのか、グリッサではなく《バラルとカーリ・ゼヴ》だったらそもそもタッチするほどのカードパワーがあるのか、など。

*6:私が勝手に呼んでいるだけである。そもそもこういった概念があるのかすら分からない。

*7:とても美味しい。

*8:T氏の提案がなければ漫然と全コモンの勝率の話をして締まりの無い会になっていた。ありがとうございます。

*9:全試合終了後に撮った写真なので、初めに組んだリストからは数枚入れ替わっている。

*10:ドラフトブースター1箱が36パック入りなのに8人ドラフトも6人チームシールドも24パックしか使わないので、余ったパックに少し買い足して第2回が開かれることもある。すべてはWotCの掌の上。